怪物ベースボールの開発版を試用してもらったところ、
「ある選手のシーズン成績が大幅に伸びた」という話を聞きました。
本人に詳しい話を聞きくため、鹿児島にインタビューに行きました。
小さいころから強打者だった
── 野球はいつ頃からやっていたんですか?
林
小学1年生の頃からおじいちゃんの影響で野球を始めて、
小さい頃から体が大きかったってこともあって、
投げることも好きでしたし、
打つに関しても遠くへ飛ばすことだったりっていうのが
小学校の頃から得意で、
高校1年生までピッチャーとしてやっていました。
── そのあと、打者に転向したんですか?
林
怪我とかもあって打者に転向して、
そこからずっと練習ではもうずっと
バットをとにかく振る素振りをたくさんするでやったり、
ティーバッティングをたくさんする。
1日に1000球振ったりとかっていうのがあったりしたので、
とにかくまずは振る力をつけるってのを
高校生大学4年生の春頃まではずっととにかく
振る練習ってのを積み重ねてきたかなっていう形ですね。
── 小さいころはどんな感じだったんですか?
林
そうですね。
小学生の頃は近所のクラブチームに入ってて、
その頃はもう本当に少数でしたんで、
試合に出る機会っていうのもたくさんあって、
なので小学生の頃の野球っていうのは
本当にとても楽しい。
野球って楽しいもんだなっていうのを
感じながら野球をできていました。
── その頃の成績はどうだったんですか?
林
その頃はもう本当に何十本も
ホームラン打ったりっていうのはザラにあって、
自分の名前が強打者として市内に広まるぐらいの力はありましたね。

── 高校に入ってからの成績はどうだったんですか?
林
その頃は振る力はあったんですけど、
どうしてもバットにボールが当たらないっていうのが
非常に多くて。
特に試合とかになるとボール球を振ってしまったりとか、
タイミングは合ってるけど、
バットとボールがずれて打ってしまうっていうのが
高校生の頃からずっとあって、
大学に入ってもそういったことがずっと続いてはいましたね。
── それが課題だったんですね。逆に、その頃の自分の強みはなんだったと思いますか?
林
自分の強みはとにかく
当たれば飛ぶっていうのが非常にあったので、
まずはやっぱり当てないといけないかったので、
とにかく当てる練習っていうのはやっぱりそれを
ハーフバッティングやったり、
マシンの打撃だったりと
動くボールで当たる練習っていうのはたくさんしていました。
── バットにボールを当てるためにそういった練習をしていた?
林
そうですね。
そういう、動くボールに対して
打つ練習っていうのは多かったですね。
見る力の大事さを知った大学の講義
── 事前に聞いた情報によると、
大学に入って全く別のことを知ったと
林
大学のスポーツ心理学の講義で
見る力・予測する力っていうのも大事だよね
っていう講義を受けたことで、
自分はもしかしたら振る力はあるけど、
そういった予測とか見る力が
ないんじゃないかなっていうのを気づかされました。
大学2年生の公式戦の時に初めて
スターティングメンバーでレギュラーとして
指名打者で使ってもらってたんですけど、
その頃練習とかではたくさん
打つことができてたんですけど、
やっぱ試合とか球速が上がるにつれて
全く打つことができなくて、
ほぼほぼ三振っていう打席内容で。
練習とかの緩いボールでは、
しっかり自分の思い描いた
長打のような打球を打つことができてたんですけど、
やっぱり球速が上がるにつれて打てなくなっていって。
それが大学2年生の頃で、そこから気にするようになりました。
── それって野球を始めて何年目の話ですか?
林
今、大学4年生でもう既に17年やってるので、
その時点では、
14年 ~ 15年くらいは野球をやってるかなと思います。
── その15年間で「見る力が大事」という考えに
出会うことはなかった?
林
そうですね。
そもそも、指導者からそういった指摘っていうのが一切なくて、
とにかく指導者から指摘されることとしたら、
スイングフォームだったり、
「こういう時にピッチャーがこういう球を投げるよね」
といった配球のことであったり
っていうのがメインだったので。
見る力が大事で予測する力が大事だよっていうのは
小中高では一切教えられてきてなかったですし、
自分もそこに関して全く知らなかったので、
とにかくまずフォームが大事・振る力が大事っていうのが
一番メインにあったかなって思います。
── 当たらない時は、
フォームを綺麗にすれば当たるんじゃないかと思っていた
林
自分のフォームが良くないから、
余分な動作があったりするから、
振り遅れたりしているんじゃないかなっていう考えでした。
── 今回の本題なんですが、ヴァーチャルリアリティ(以下、VR)を使ったトレーニングは何をきっかけにやるようになったんですか?
林
きっかけは、先ほど話した大学の講義の時に、
VRを使うことで、予測により特化した練習ができると
講義の中で先生がおっしゃられていて。
これを使えばもしかしたら自分にその予測能力とか、
そういう判断する力・見る力っていうのが
鍛えることができるんじゃないかなっていうので、
授業が終わったあとすぐその先生に
「自分は今こういう状況でトレーニングすることができますか」
っていうのをメールさせてもらいました。
VRを使ったバッティングの練習
── VRのトレーニングをはじめたのはいつ頃なんですか?
林
実際にトレーニングを始めたのは、大学の3年生の8月ごろ、
「ボールを遮蔽して予測能力を鍛える」ってのをVRでやってたんですけど、
それは実際にスイングする動作っていうのは含まれてませんでした。
見て判断するっていうだけだったので、
あんまり、その、効果は感じられなかったです。
そこから1年経ってちょうど大学4年生の7月下旬頃から
実際にスイングも含んだトレーニングっていうのを開始し始めましたね。
── 見るだけじゃなくて、実際に振らないと駄目だったんですね
林
そうですね。やっぱり振る動作っていうのが大事かなって。
見るだけだったらすぐに判断することができるんですけど、
900グラムくらいのバットを持って、
そこで振る振れないの判断をしないといけないってなると、
動作っていうものがないと難しいのかなって、やりながら感じました。
── その難しいというのは、「反応はできるようになるんだけど、実際の現場に立つとうまくいかない」ということ?それとも、「判断能力もあまり変わらなかった」ということ?
林
判断能力に関しては、たぶん少し変わったのかなと思うんです。
その分、判断できてるけど、バットがついてこないっていう形になるので、
(スイングを)キャンセルしきれないとか、振り切れないとか。
バットを振らない場合は、
自分のタイミングがちょっと遅れてても
判断することができるんですけど、
実際の場合だったら、判断できたっていうのは、
やっぱりバットにボールが当たったとか、
しっかり見逃せたっていうことになるので、
やっぱりそこができてなかったので、
見るだけではあんまり効果が
感じられなかったなっていう感じがしました。
── その後、実際のバットを振る形で、VRのトレーニングをするんですね
林
そうですね。
そのからバットを振りながらVRでトレーニングするって形になりました。
── トレーニング内容について具体的に教えてください
林
自分の問題点として、
バットにボールが当たらないっていう、
スイング誤差があったので、
*(編集注:ボールとバットの空間的な誤差)*
これまでの練習はティースタンドに
ボールを置いて静止した球を打つ練習して、
自分が思ってるところにバットを
振るっていう練習をずっとしてました。
それだったら、
「同じボール軌道に対して同じスイングしかできない、
それだったら良くない」
っていうことを研究者の先生に指摘されたことから、
「ボールを打ち分けるトレーニング」と
あと「ボールを実際振った後に
ボール軌道と自分のスイングがリプレイされて
視覚的なフィードバックを得ながらトレーニングする」
っていう2種類のトレーニングをメインでやっていました。

── 実際に自分のスイングのリプレイを見てみて、どうでした?
林
正直、最初の頃は自分では
「これボールに当たっただろう」
って思ったスイングでも、
実際には全然ボールの下を振っていたり、
上を振っていたりっていうので、
結構誤差っていうのは
あったんだなっていうのを、
そのリプレイを見て初めて知ることができました。
── 今までも試合の自分の映像を見返したりすることがあったと思うのですが、映像では誤差に気付くことはなかったんですか?
林
試合の映像を見ていたら
「タイミングは合ってるけど、
ボールの下を振っている」という
自覚はあったんですけど、
でも(、リプレイを見てみると)
ここまでズレてるのかなっていう。
出場試合の映像も
結構遠い場所からの映像だったので、
VRの場合は自分のスイングした打席内で、
自分の位置からリプレイを
見ることができるので、
「あ、実際こんなにもずれてるんだ」っていうのを
見ることができたので、
そこは試合映像とは違った。
フィードバックの仕方が、
非常に良かったかなと思っています。
── どれくらい修正すればいいかっていうのが実際に見えるのがよかったんですね
── VRのトレーニングはどれくらいの期間で、一回どれくらいの時間やってたんですか?
林
始めたのは大体8月上旬から
9月下旬にかけてで、
2カ月間をほぼ毎日行うようには
していていました。
1セッションが9球で、
ストライクゾーンを9分割して
各コース1球来るようになっていて、
それを1日10セット、
計90スイングを行うようにしていました。
── 90スイングすると何分くらいかかるんですか?
林
大体休憩も含めると1時間~45分ぐらいは掛かりますね。
── じゃあ2カ月間ほぼ毎日、1時間弱VRトレーニングをやっていた!?
スイング後に予想した結果を、リプレイで答え合わせする
── 2ヶ月のトレーニングをしてみて、どうでした?
林
劇的に変わりましたね。
まず、ボールとバットのズレっていうのが
だいぶなくなったというか、
ほぼほぼなくなりました。
で、実際の試合の場面においても、
これまでは全く打つことができなくて、
バットにボールすら当たらなくて
三振ばっかだったんですけど、
今回のトレーニング後の試合では、
三振数がそもそも減って、
コンタクト率も大幅に上昇したので、
*(編集注:ファウルボールも含め、バットがボールに当たった割合)*
試合場面でも実感を得たっていうか、
成績にも効果が反映されたなというのを感じました。
── それは何が変わったからなんでしょうか?例えば、相手が投げてきたボールが見えるようになったんですか?
林
(相手が投げてきたボールが)見えるようにも
なりましたし、
先程言ったようにやっぱり振ったとき、
これまでだったら
「タイミングは合ってるけど空振り」
が多かったんですけど、
ファウルであったり、ヒットになることとか、
ホームランになることっていうのが増えました。
見えるようにもなったし、
当たるようにもなったっていうこの2つが大きかったかなと思います。
── ということは、今までもどこに来るかの予測は合ってたけど、自分の動作がずれてたのかもしれない?
林
そうですね。
自分の動作が大幅かは分かんないですけど、
やっぱりずれてたのかなってる感じはしますね。
── それが、自分の動作のリプレイを見ることによってそのズレが矯正されたと
林
だいぶ矯正はされたかなと。
毎日リプレイを見てたので、
やっぱりそれが効いたのかなと感じますね。
── VRのトレーニング内容の中で、何が一番効いたと自分では分析していますか?
林
自分の中ではまず一つは
先程言ったリプレイというのが
一番大きい要因の一つかなと考えていて、
このリプレイっていうのが、
実際ボールがピッチャーから投げられて、
実際、自分がバットを振って、で、一瞬ですけど、
少し時間をおいてからリプレイが流れてきて、
で、それで当たったら実際に打球が飛ぶので、
そこ(打球の軌道)を見るって形だったんですけど。
自分がバットを振ってリプレイが流れるまでの
その一瞬の間に、
「自分はボールの下を振ったな」
「今のはボールの上だな」
「これは完璧だな」っていうように、
自分の中でフィードバック結果っていうのを
考える時間が一瞬あって、
それを答え合わせでリプレイをして
「あ、やっぱり今ボールの下を振ってたんだな」っていうように、
何でそれが当たらないのっていう自分での
自己解決だったりを、自分で考えるっていう時間が、
一瞬だったんですけど、
あったのが良かったのかなという感じがします。
── 実は、ボールがスイングした時に飛ばないのは技術的な問題で、本当は飛ばしたかったんですよね。でも、それが逆に良かった。
林
これまでの練習だったら、
打球が飛んでしまうと、
自分の打球がどうだったのか、
ライナーだったのか凡打だったのか
フライだったのかっていうように、
どうしても打球の質で
今良かったのか悪かったのかっていう
フィードバックをしてしまうんですけど、
VRだったら(すぐに打球が)飛ばないことのおかげで、
打球にフォーカスするんじゃなく、
自分のスイング位置とボール軌道の誤差により
フォーカスしてフィードバックすることが
できたっていうのが、
今までこの10何年間やってこなかったことで、
そこがやっぱり必要だったのかなって感じがします。
── 最初に言っていた「いろんな方向に打ち分ける」っていうのもまた効いた?
林
そうですね。
打ち分ける方法として、
先程言ったように、
一回9球のトレーニングだったんですが、
1から3球目はレフト方向に打つ、
4から6球目はセンター方向に打つ、
で、7から9球はライト方向に打つっていうように
打ち分けていました。
ボールはランダムに来るので、
もちろんインコースに来たボールを
レフトに引っ張るってのは容易にできるんですけど、
じゃあ右方向に打ちますよってのに対してインコースに来たら、
どうしても内からだいぶ遅らせて
バットで狙って打たないといけなくて、
そういう打ち方っていうのは
普段のグラウンドでの練習では絶対しない振り方でした。
ですが、その絶対やらない振り方をしたことで、
いろいろなボール軌道に対しての
アプローチの仕方ってのを覚えたことで、
いろんなスイングを自分の中で覚えたと思います。
あと、自分がコンタクトできる幅っていうのも
広がったのかなって。
*手で表すと、最初はこれぐらい(編集注:10cmも満たない)*
少ない幅でしかコンタクトすることができなかったのが、
様々な方向に打ち分けたり、
様々なスイング軌道を覚えたことで、
コンタクトできる幅が広がったのが、
パットにボールが当たることが増えた要因にも
考えられるなとは、自分の中では考えてます。
トレーニング後の試合でいきなりホームラン
── その後、試合ではどうだったんですか?
林
その時はレギュラーから外されてたんですけど、
1試合だけ代打で最終回に9回に出させてもらって。
で、初球ホームランを打つことができて。
これまでだったら、代打で試合に出場したら、
初球はとにかく振るっていうのは
自分で決めていて、
まぁ振ったらだいたい空振りで、
そこから簡単に追い込まれて
三振するっていう流れだった。
僕もそうですし、指導者もそうですし、
チームメートもみんなそういう風に
「林は確実に見逃して絶対三振する」
っていう風にもうインプットされていて、
それっていうのが、
このトレーニング後の期間の試合では
一切なくなりました。
周りの印象もだいぶ変わったし、
自分の成績も変わったし、
打席内容も変わったなって感じがします。
── すごい賞を取ったと聞きましたよ
林
そうですね。
自分はこれまで一回も
打撃の賞を取ることが
できなかったできなかったですし、
そもそも、規定打席にすら
到達することができなかったので、
その賞っていうものには
縁が全くなかったんですけど。
今回、全試合出場させてさせて
いただくことができて、
かつたくさん打席にも立つことができ、
その中で「最優秀打者賞」と
「打点王」とあと
「ベストナイン指名打者」3つの部門で
初めてタイトルを取ることができました。
チームも優勝することができましたし、
自分も賞を取ることができたので、
非常に良い大会になりました。

── いま絶好調だと思うんですが、現状の課題って何かありますか?
林
これまでのトレーニングは全部、
同じ球速のストレートで行ってました。
それも大体120~130km/hぐらいの
ボールの球速でやっていました。
最初のまだ全国レベルより前のところでは、
大体この球速帯のストレートを
打つことができたんですけど、
やっぱりレベルが一つ上がって
140キロ150キロ近いボールになってくると、
ストレートもなかなか打つことができないし、
かつ変化球に対しての
練習ってのは一切してなかったので、
レベルが上がって変化球のキレが増したり、
フォークボールをキレよく投げられたりすると、
どうしてもまだ打つことが
できなかったなというのがあります。
── VRでも相手のレベルに合わせて、それと同じような速さのボールを練習する必要がありそうということですね
林
球速もそうですし、
変化球に関しての練習っていうのも
入れていかないと、
真っ直ぐだけ投げてくるピッチャーは
大学レベルになってくると絶対いないので、
そういった組み合わせでの
練習も必要になってくるなと思いました。
VRはボールを拾いにいかなくていい
── VRのトレーニングをやっていて、もちろん部活でも野球のトレーニングをやっていて、両者を比較してどのような違いがあると感じていますか?
林
一番(の違い)はVRでやった方が
簡易的にできると感じています。
その理由として、
実際にグラウンドで
打撃練習をしようってなると、
まず練習相手が必要なので、
一人で練習することができません。
ハーフ打撃を例にすると、
練習相手がボールを投げてくれるんですけど、
やっぱり人が投げるんで、
どうしてもボール球っていうのが
出てきてしまう。
ピッチャーが投げた球に
ボールに対して半分、
もしくはそれ以下ぐらいの
ボールしか打つことしかできないので、
そもそもボールを振る数っていうのが
少なくなってしまいます。
VRだったら、
プログラムされたボールに対して
毎回同じところにボールが来てくれるので、
確実に振ることができ、
そこでまず数をたくさん振ることが
できるっていうのが、まず一つ。
── 人がやるので、どうしてもそういったロスが生まれてしまうんですね。
林
あと、練習する環境として、
フリーバッティングした後だったら
ボールを拾いに行かないといけなくて、
それを拾いに行くのも
だいたい20分ほどかかってしまいます。
そこから、グラウンド整備をして
ネットを片付けてってなると、
練習してない時間の方が
もしかしたら長いんじゃないかなって
感じられるんですけど、
VRだったら電源をつけて
ヘッドマウントディスプレイつけて、
で、もう始められるっていう形なので、
そういった面に関する
トータル時間の方も短縮することができる。
そのボールを拾ったりする時間を、
VRは振る時間・トレーニングする時間に
充てられるので、
時間の面でもやっぱVRの方が
効率よく練習することが
できるのかなって感じがします。

── あと、VRのトレーニングは天候に左右されないというのは聞きますね
林
そうですね。
やっぱり夏とかになるととても暑いので
*(編集注:インタビューした2023年は記録的猛暑だった)*、
外で長時間練習することは
できないんですけど、
夏でも室内でVRを使っていたので、
それだと空調設備
(のある屋内で長時間の練習ができる)とか、
雨の日も実際の試合場面を
想定しての練習ができます。
自分も実際に、
期間中一回台風が来て、
その期間は外での練習は危ないって
ことだったんですけど、
台風の時ですらVRで
試合に近い練習ができるっていう、
本当に天候に左右されることなく
できるっていうのがVRの良さっていう感じがします。
── VRだと、当然、現実とは違う環境なのですが、2ヶ月トレーニングをしていて、どれくらい現実との違和感を感じましたか?
林
違和感はやっぱり
ヘッドマウントディスプレイつけてるとこの
重みがあるので、
そこに関してはちょっと
現実と違うなって感じがしますね。
でも、僕はやってて、
そこまで違和感というのは感じなくて、
モワッってする
*(編集注:ヘッドマウンドディスプレイに熱が籠る)*
とかっていうのはあったんですけど、
自分のトレーニング自体がそもそも
1セット終わる短いセッションだったので、
すぐ取り外して、
またつけてっていうのを繰り返したんで、
特に汗もかかず、結構快適にできたので、
そんな現実場面と差異っていうのは
そこまで自分は感じられなかったですね。
── よく聞く話だと、現実と比べて視野が狭いというのがあるんですが、あんまりそれも感じなかったですか?
林
そうですね。
自分は特にそこまで視野(が狭い)っていうものは
感じられなかったですね。
*(編集注:今回のトレーニングに
使用するヘッドマウンドディスプレイとして、
視野角が広めのValve Indexを選定している)*
── VRのメリットとして、様々な計測データがあるんですが、何か活用していますか?
林
自分の場合、
スイング軌道を取ることができること、
しかも実際に試合を想定しての
スイングの軌道を見ることが
できることですね。
やっぱり、
実際の試合のボールに対して
スイング軌道と、
練習のハーフバッティングの
スイング軌道っていうのは
少し違うのかなって、
自分の中で思っているので。
試合でのスイング軌道を
見ることもできますし、
かつ、打球速度だったり、
(打球)角度とかっていうのも
実際の(現実相当のデータを)中で
出すことができるので。
そこでも、
「今のスイングの当たり具合とか、
スイングの仕方だったらこれぐらいだ」
「球速これくらいかな」と
トレーニング中にイメージをしやすくなりましたね。
ここまで結果が出たので、企業チームで野球を続けることに
── どういう人がVRでトレーニングすると伸びると思いますか?
林
一番は自分と同じような、
自分が思ったところに
スイングすることができなかったり、
スイングする位置にズレが生じている、
(自分の予想と実際の)ボールと
バットの軌道がズレてるっていう
選手にとっては、
カメラで撮って自分にフィードバックするのも
いいんですけど、
それだとどうしても
自分がスイングした位置から
見ることができないので、
VRでやるべきだと思います。
*(編集注:自分のスイングをリプレイで確認する)*
あと、自分もボール球を振るってことが
たくさんあったので、
そういったストライクボールを
予測・判断する力っていうのが
ない人もVRだったらボールを遮蔽して
予測することのトレーニングを
することもできます。
そういった、
ボール球をたくさん振ってしまう
選手だったり、
スイング軌道にズレが生ずる選手というのは、
ぜひVRでトレーニングした方が、
そこにフォーカスして
練習することができるので、
よりすぐパフォーマンスは上がると思います。
── 「こういうトレーニングがあったらいいのにな」というものは何かありますか?
林
そうですね。
自分だったらボールを自分で
自在に作れるってのがあります(欲しいです)。
例えば、今だったらプロ野球とか
メジャーリーグとかも、
投球データがあったりするので、
そういったデータを活用して、
自分でボールを作成して、
色々な変化球だったり、ストレートだったり、
いろんな球速帯っていうのを
自分で練習できるといいと思います。
VRだったら容易に再現できますし、
バッティングマシーンとは違って
確実にそのコースに来るので、
そういったボール軌道を自分で作成して
できるといいと思います。
これはピッチャーに関しても、
自分が投げているボールデータを
VR中に入れて、
実際に自分が打席に入ってみたりとか、
キャッチャー目線で見たりして、
「自分のボールこういうボールなんだな」とか
「だったら、もうちょっと曲げないと
いけないんだな」とか
「ここから曲げないといけないんだな」っていうのを
ピッチャーでもVRを使用して練習だったり、
イメージってすることが
できるのかなと思います。
今は打者のお話が
メインだったんですけど、
そういった投手の目線からでも
VRっていうのは全然活用することって
いうのはできるのかなというのは感じます。
── 将来の展望は?
林
これまではVRに関してもっと
打撃に関する研究をしていこうっていうで、
大学院進学を目指していたんですけど、
このVRトレーニングによって
ここまで打撃パフォーマンスが向上したことで、
やっぱりもっと野球がしたいな、
もうここで終わっちゃうのかなって
いうのを思うようになって、
進路は野球を続けるってことで、
企業チームで野球を続けるっていうように
進路が大幅に変わりました。
VRをしながら打撃パフォーマンスを
向上し続けたいなと思っています。
── ぜひ頑張ってください。ありがとうございました

インタビュー・編集: 江藤光、撮影: 石田元気
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