ここまで、「ボール軌道の予測」について解説してきました。
でも、打撃に必要な予測は、実はもう一つあります。今回は、「スイング結果の予測」について解説します。
これは、「相手(投手)のボールを予測する」のとは逆で、 「自分(打者)の動きの結果を予測する」という話です。
野球をやったことがある人なら、こんな経験ありませんか?
「打つ前に、どんな打球になるか分かる」
実際にボールとバットが当たる前なのに、 「あ、これは詰まる」 「これは良い当たりだ」 と分かる感覚です。
また、キャッチボールで、 ボールが手を離れる前に、 「あっ、抜ける」 と予感することもありますよね。
これらは、 結果を知る前に、結果を予測している ということです。
実は、上手い打者は、 「投球を予測する力」だけでなく、 「自分の打球を予測する力」も優れています。
つまり、 「自分のスイングで、どんな打球が飛ぶか」を 正確に予測できるんです。
ここで疑問が生まれます。
「打った後の結果を予測できること」と、 「今、この瞬間に打てること」は、 どう関係しているのか?
打った後なら、もう遅いですよね?
実は、研究では、 結果予測が正確な打者ほど、打撃成績も高い ことが分かっています。
なぜでしょうか?
答えは、脳にある「内部モデル」という仕組みにあります。
脳が「スイングしろ」という指令を出すと、 この指令は2つの場所に送られます。
1. 筋肉 → 実際に身体を動かす 2. 内部モデル(小脳) → 結果を予測する
内部モデルは、指令を受け取った瞬間に、 身体が実際に動くより先に、 「こうスイングしたら、こうなる」と予測します。
つまり、未来を先取りしているんです。
なぜこれが役に立つのか?
予測があるから、スイング中に修正できるのです。
例えば、スイングの途中で、 「このままだと詰まる」 「当たらない」 と予測できれば、
脳は瞬時に:
ポイント:眼で見てからでは遅い
スイングはとても速いので、 「目で見て → 判断して → 修正する」 では間に合いません。
だから、脳は 予測に基づいて修正しているんです。
つまり、 結果予測が正確な人ほど、 スイング中の修正も正確になり、 バットに当たる確率が高まる ということです。
では、この「結果予測」は鍛えられるのでしょうか?
残念ながら、 野球の打撃における結果予測のトレーニング方法については、 まだ研究が少なく、確立された方法はありません。
ただし、前回紹介した知覚トレーニングと同じように、 「予測 → 正解を確認 → 繰り返す」 という方法が有効だと考えられています。
例えば、怪物ベースボールでは、 結果予測を鍛えるトレーニングコンテンツがあり、 実際に予測力が高まることが確認されています。
また、普段の練習でも: