前回、
選球眼を「眼の良さ」ではなく、
投球を見て、振るか、見逃すかを選ぶ「選球判断」
として考えることを解説しました。
では、選球判断が良いと、
打者にどのようなメリットがあるのでしょうか?
最もわかりやすい効果は、四球です。
ボール球に手を出さなければ、
ボールカウントを増やしやすくなります。
その結果、四球で出塁する可能性も高まります。
これは多くの指導者や選手も
直感的に理解していると思います。
「選球眼が良い選手は、四球を選べる」
これは間違いではありません。
実際の研究でも、大学野球選手を対象に
ストライク・ボールの判定能力と公式戦成績を比べたところ、
判定能力が高い選手ほど、出塁率や四球率も高い
ことが報告されています。
でも、選球判断の価値は、四球だけではありません。
ここからが本題です。
ボール球を見逃して
カウントを有利に進めると、
投手はストライクを取りに行く必要が高まります。
すると、投手は厳しいコースだけで
勝負しにくくなります。
その結果、ボールは
ゾーン中央付近に集まりやすくなり、
打者にとって打ちやすい球が来やすくなります。
さらに、投手はストライクを取りやすい球種を選びやすくなるので、
直球系が増え、変化球が減りやすい傾向もあります。
球種を絞りやすくなれば、
打者はタイミングを合わせやすくなります。
甘い球が来やすい。球種を絞りやすい。 タイミングを合わせやすい。
このような状況では、打者は
「守りながら当てる」のではなく、
強く振りにいきやすくなるんです。
ここが重要なポイントです。
ボールを見逃すことは、
消極的な行為ではありません。
自分が強く打てる球を待つための、
攻撃的な判断なんです。
実際、メジャーリーグの11シーズン分、
約900万球を対象とした大規模な分析でも、
ボールカウントが増えるほど、
打撃成績や打球の強さが高くなる傾向が
確認されています。
また、打者有利なカウントほど、
投球が真ん中付近に集まりやすく、
直球系の割合が増えやすいことも示されています。
つまり、選球判断が良い打者は、
勝負しやすい球を待って、
強くスイングしているわけです。
ただし、誤解しないでほしいのは、
選球判断が良ければ、
自動的に長打が増えるわけではないということです。
実際に長打を打つためには、
スイング速度や、ミート能力、
打球の角度、インパクトの正確さなどが必要です。
選球判断は、
これらの能力を発揮しやすい状況を作る
ためのものです。
選球判断が良い打者の流れは、こうです。
ボール球に手を出さず、打者有利なカウントを作り、
甘い球を待ち、球種を絞って、強く振る。
この流れを作れることが、
選球判断の大きな価値です。
最近の研究では、大学野球選手の
投球判断中の脳の働きと
翌シーズンの打撃成績を比べたものがあります。
その結果、ボールに手を出さないように
脳が働きやすい選手ほど、
打率や長打率などの打撃成績も高い
ことが報告されています。
このことは、打撃成績が
単にスイング動作だけで決まるわけではないことを
示しています。
投球を見て、振るか見逃すかを選ぶ脳の処理も、
実戦での打撃成績に関わっている可能性があるんです。
選球判断は、
四球を選ぶためだけの能力ではありません。
打者有利な状況を作り、
自分が強く打てる球を待つための能力です。
次回は、なぜ普段の練習では
選球判断を鍛えにくいのか、
そして、どうやって練習に組み込めばよいのかを
考えていきます。